エフ琉球
株式会社エフ琉球

直接原価計算 クロス分析レポート

変動費・固定費分解による3期間比較分析
クーポン戦略転換で安全余裕率が2倍に改善

📋 エグゼクティブサマリー

エフ琉球の収益構造は、前期から当期にかけて根本的な転換を遂げた。前期は「高粗利益率(67〜70%)× 巨大固定費(クーポン19億円)」という薄利ハイリスク構造で、安全余裕率はわずか5.2%だった。当期はクーポンを¥2.9億に圧縮し、固定費を42.4%削減したことで、安全余裕率は11.8%に改善した。

しかし、粗利益率は70.5%から52.6%へ17.9pt低下しており、原材料費率の急上昇(23.0%→39.1%)が新たなリスク要因となっている。売上高も当期7Mで¥24.97億と前期同期比△20.1%で減収している。固定費削減による利益確保は進んだが、トップライン回復と粗利益率の改善が次の経営課題である。

前期構造
70.5%
粗利益率は高いがクーポン¥19億で固定費巨大。安全余裕率5.2%
当期構造
52.6%
固定費42%削減で安定化。しかし粗利益率が18pt低下
営業利益
¥1.54億
当期7Mで前期同期比+41%。固定費削減効果が寄与
粗利益率
52.6%
前期通期比 △17.9pt
損益分岐点売上高
¥22.0
前期同期比 △25.6%
安全余裕率
11.8%
前期同期比 +6.6pt
固定費(7M)
¥11.6
前期同期比 △42.4%
クーポン費(7M)
¥2.9
前期同期比 △84.9%
📊 3期間 直接原価計算P/L比較
項目 当期7M
R7.8〜R8.2
前期同期7M
R6.8〜R7.2
前期通期12M
R6.8〜R7.7
前期後半5M
R7.3〜R7.7
純売上高 ¥2,496,830 ¥3,126,545 ¥5,433,862 ¥2,307,317
原材料費 ¥977,038 ¥801,211 ¥1,248,151 ¥446,940
運賃 ¥206,139 ¥206,215 ¥357,327 ¥151,112
変動費計 ¥1,183,177 ¥1,007,427 ¥1,605,478 ¥598,051
粗利益 ¥1,313,653 ¥2,119,118 ¥3,828,384 ¥1,709,266
粗利益率 52.6% 67.8% 70.5% 74.1%
手数料(EC関連) ¥900,461 ¥1,771,294 ¥2,948,356 ¥1,177,062
うちクーポン ¥286,333 ¥1,127,182 ¥1,896,540 ¥769,358
うちネット広告 ¥274,155 ¥345,668 ¥525,862 ¥180,194
うちネット販売原価 ¥337,138 ¥294,581 ¥520,490 ¥225,909
うち販促費 ¥2,504 ¥3,398 ¥5,029 ¥1,632
うちその他 ¥332 ¥465 ¥435 △¥30
労務費 ¥89,443 ¥79,674 ¥139,933 ¥60,259
外注加工費 ¥74,167 ¥62,497 ¥116,776 ¥54,279
販管費 ¥95,235 ¥96,168 ¥176,058 ¥79,890
固定費合計 ¥1,159,305 ¥2,009,633 ¥3,381,123 ¥1,371,490
営業利益 ¥154,348 ¥109,485 ¥447,261 ¥337,775
注: 直接原価計算の営業利益(粗利益 − 固定費)は在庫評価差異により全部原価ベースと一致しない場合がある。全部原価ベースの営業利益は当期¥154,348千円 / 前期通期¥255,035千円。
(単位: 千円)
📐 損益分岐点分析の進化 — 損益分岐点と安全余裕率
指標 当期7M 前期同期7M 前期通期12M
粗利益率 52.6% 67.8% 70.5%
固定費 ¥1,159,305千円 ¥2,009,633千円 ¥3,381,123千円
損益分岐点売上高 ¥2,204,000千円 ¥2,963,471千円 ¥4,796,627千円
実績売上高 ¥2,496,830千円 ¥3,126,545千円 ¥5,433,862千円
安全余裕率 11.8% 5.2% 11.7%
安全余裕額 ¥292,831千円 ¥163,074千円 ¥637,234千円
月平均損益分岐点売上高 ¥314,857千円 ¥423,353千円 ¥399,719千円
構造転換のポイント: 前期同期は粗利益率67.8%と高水準だったが、固定費が¥20.1億と巨大だったため損益分岐点売上高は¥29.6億に達し、安全余裕率はわずか5.2%だった。当期は粗利益率が52.6%に低下したものの、固定費を¥11.6億に圧縮したことで損益分岐点売上高を¥22.0億に引き下げ、安全余裕率を11.8%に改善した。
🔍 粗利益率の構造変化分析

粗利益率は前期通期70.5%から当期52.6%へ△17.9pt低下。主因は原材料費率の急上昇(23.0%→39.1%、+16.1pt)。運賃率は6.6%→8.3%で微増にとどまる。

構成 当期7M 前期同期7M 前期通期12M 変化(当期 vs 前期通期)
原材料費率 39.1% 25.6% 23.0% +16.1pt
運賃率 8.3% 6.6% 6.6% +1.7pt
変動費率 47.4% 32.2% 29.5% +17.9pt
粗利益率 52.6% 67.8% 70.5% △17.9pt
緊急度:大

粗利構造の変化 — インフレ下の原材料費高騰

インフレの影響下、原材料費率が前期同期比で+15.2pt上昇(25.6%→39.1%へ悪化)。 売価の見直しや仕入れ原価の単価がどこまで上昇しているかを正確に把握する必要がある。
ここが経営課題の重心であり、ここを改善することで利益貢献度が一気に高まる。 以下のシミュレーションが示す通り、わずか5〜10%の値上げ転嫁で営業利益は2〜3倍に跳ね上がる。

値上げ転嫁シミュレーション(当期7ヶ月ベース)

シナリオ 値上げ率 売上高 変動費 粗利益 粗利益率 固定費 営業利益 営業利益率 利益増加額
現状 0% ¥2,496,830千円 ¥1,183,177千円 ¥1,313,653千円 52.6% ¥1,159,305千円 ¥154,348千円 6.2%
値上げ +5% +5% ¥2,621,672千円 ¥1,183,177千円 ¥1,438,495千円 54.9% ¥1,159,305千円 ¥279,190千円 10.7% +¥124,842千円(+80.9%)
値上げ +8% +8% ¥2,696,577千円 ¥1,183,177千円 ¥1,513,400千円 56.1% ¥1,159,305千円 ¥354,095千円 13.1% +¥199,747千円(+129.4%)
値上げ +10% +10% ¥2,746,513千円 ¥1,183,177千円 ¥1,563,336千円 56.9% ¥1,159,305千円 ¥404,031千円 14.7% +¥249,683千円(+161.7%)
値上げ転嫁の利益インパクト: 変動費は据え置きのまま売価だけが上昇するため、値上げ分がほぼ全額粗利益に上乗せされる。 5%値上げで営業利益は+81%(¥1.54億→¥2.79億)、10%値上げで+162%(¥1.54億→¥4.04億)。 仮に値上げにより販売数量が10〜15%減少しても、粗利益の増加で十分に吸収できる試算となる。 これは全ての改善施策の中で最も利益感度が高く、経営課題の重心である。
🔧 固定費の大転換 — クーポン削減が構造を変えた

固定費最大の変化はクーポン費。前期通期¥19.0億→当期7Mで¥2.9億(△84.9%)。手数料全体では¥29.5億→¥9.0億(△69.5%)に縮小。これにより固定費構造が根本的に変化した。

固定費項目 当期7M 前期同期7M 前期通期12M 当期 vs 前期同期
手数料(EC関連) ¥900,461 ¥1,771,294 ¥2,948,356 △49.2%
うちクーポン ¥286,333 ¥1,127,182 ¥1,896,540 △74.6%
うちネット広告 ¥274,155 ¥345,668 ¥525,862 △20.7%
うちネット販売原価 ¥337,138 ¥294,581 ¥520,490 +14.4%
労務費 ¥89,443 ¥79,674 ¥139,933 +12.3%
外注加工費 ¥74,167 ¥62,497 ¥116,776 +18.7%
販管費 ¥95,235 ¥96,168 ¥176,058 △1.0%
固定費合計 ¥1,159,305 ¥2,009,633 ¥3,381,123 △42.3%
(単位: 千円)

前期通期12M 固定費内訳

当期7M 固定費内訳

📅 月次直接原価P/L + 全部原価指標(当期7M)
純売上高 原材料費 運賃 変動費計 粗利益 粗利益率 固定費計 営業利益 原価率 粗利益率(全部) 営業利益率
8月 ¥335,752千円 ¥158,606千円 ¥28,866千円 ¥187,472千円 ¥148,280千円 44.2% ¥158,541千円 △¥10,260千円 99.6%異常 0.4%異常 △3.1%
9月 ¥359,342千円 ¥118,154千円 ¥31,423千円 ¥149,577千円 ¥209,765千円 58.4% ¥161,645千円 ¥48,120千円 83.4% 16.6% 13.4%
10月 ¥349,413千円 ¥123,570千円 ¥28,068千円 ¥151,639千円 ¥197,774千円 56.6% ¥159,769千円 ¥38,006千円 85.7% 14.3% 10.9%
11月 ¥409,689千円 ¥153,547千円 ¥29,513千円 ¥183,060千円 ¥226,629千円 55.3% ¥175,485千円 ¥51,144千円 83.0% 17.0% 12.5%
12月 ¥345,361千円 ¥154,885千円 ¥31,701千円 ¥186,586千円 ¥158,775千円 46.0% ¥173,632千円 △¥14,857千円 100.9%異常 △0.9%異常 △4.3%
1月 ¥377,459千円 ¥166,658千円 ¥30,242千円 ¥196,900千円 ¥180,559千円 47.8% ¥179,070千円 ¥1,488千円 94.1% 5.9%注意 0.4%
2月 ¥319,814千円 ¥101,617千円 ¥26,326千円 ¥127,944千円 ¥191,870千円 60.0% ¥151,164千円 ¥40,707千円 84.3% 15.7% 12.7%
外れ値分析: 8月(粗利0.4%)・12月(粗利△0.9%)は原価率が100%前後に達しており、原材料費の集中計上または在庫評価影響が疑われる。1月(粗利5.9%)も正常水準を下回る。いずれも粗利益率が44〜48%に低下する月と一致している。

月次 粗利益 vs 固定費

月次 原価率・粗利率・営業利益率

📦 在庫・CCC(資金回収日数)分析

棚卸資産推移(3時点)

項目 R7.2末 R7.7末 R8.2末
棚卸資産計 ¥555,219千円 ¥466,624千円 ¥624,681千円異常
原材料 ¥323,648千円 ¥308,168千円 ¥438,304千円異常
製品 ¥111,496千円 ¥81,022千円 ¥142,280千円
未納品 ¥120,075千円 ¥77,434千円 ¥44,097千円
在庫回転日数 40.5日 34.0日 59.2日異常

CCC(資金回収日数)

指標 R7.2時点 R8.2時点 変化
売掛金回転日数 13.7日 15.6日 +1.9日
在庫回転日数 40.5日 59.2日異常 +18.7日異常
買掛金回転日数 9.8日 21.9日 +12.1日
CCC(資金回収日数) 44.4日 52.9日異常 +8.5日
在庫の逆行: 前期後半(R7.3〜R7.7)は棚卸資産廃棄損¥27.4百万円を計上しつつ在庫を¥555M→¥467Mに削減した。しかし当期で¥624Mに急増(+33.9%)。原材料が¥438Mと突出しており、在庫回転日数も34.0日→59.2日に悪化。CCC(資金回収日数)は44.4日→52.9日に拡大し、買掛金回転日数の改善(9.8日→21.9日)で一部相殺されているものの、キャッシュサイクルの効率低下が顕著。
🧮 経営シミュレーション — 感度分析

当期7Mの実績をベースに、売上変動・粗利益率改善・固定費削減の3軸で営業利益への感度を分析する。

シナリオ 売上高 粗利益率 粗利益 固定費 営業利益 営業利益率
売上△10% ¥2,247,147 52.6% ¥1,181,999 ¥1,159,305 ¥22,694 1.0%
現状(実績) ¥2,496,830 52.6% ¥1,313,333 ¥1,159,305 ¥154,028 6.2%
売上+10% ¥2,746,513 52.6% ¥1,444,665 ¥1,159,305 ¥285,360 10.4%
粗利益率+5pt ¥2,496,830 57.6% ¥1,438,174 ¥1,159,305 ¥278,869 11.2%
粗利益率+5pt & 売上+10% ¥2,746,513 57.6% ¥1,581,991 ¥1,159,305 ¥422,686 15.4%
固定費△10% ¥2,496,830 52.6% ¥1,313,333 ¥1,043,375 ¥269,958 10.8%
全改善(売上+10% & 粗利益率+5pt & 固定費△10%) ¥2,746,513 57.6% ¥1,581,991 ¥1,043,375 ¥538,616 19.6%
(単位: 千円。粗利益 = 売上 × 粗利益率で計算)
感度の優先順位: 粗利益率+5pt改善で営業利益は+¥124,841千円(+81%)。売上+10%で+¥131,332千円(+85%)。固定費△10%で+¥115,931千円(+75%)。いずれのレバーも大きな効果があるが、粗利益率の回復(原材料費率の適正化)が収益構造改善の最優先課題である。

📝 総括 — 3期間を通じた構造転換の評価

エフ琉球は前期の「クーポン依存型の売上拡大モデル」から、当期は「固定費圧縮型の利益確保モデル」へと大きく舵を切った。この構造転換は以下の成果と課題を残している。

成果:

課題:

今後の重点施策:

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